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デンマークのキャッシュレス生活

2006年6月5日

日常生活で使う電化製品など、エレクトロニクスな物といえば、大抵の場合、デンマークよりも日本のほうが進んでいる。6年前、私がデンマークにやってきた当時、日本ではケータイの画面がちょうどカーラーになった頃で、画面サイズもどんどん大きくなりつつあった。しかしデンマークで人気のNokiaのケータイといったら、最新モデルでも画面は白黒で文字が数行しか入らないくらいの大きさ。デザインもなんかイマイチ・・・。デジタルカメラも、今ほど誰でも持っているという状態ではないものの、日本では普通のものになりつつあったが、デンマークではまだ実際に手に取ったことがないという人が大半。みんな私のちゃちなデジカメを珍しがり、パーティーの席で、私のデジカメはテーブルにつく人達の間を手から手へとまわされたものだった。みんな順々に手にとっては珍しそうに表を見たり裏を見たり。そして中に入ってる写真を見て、実際に画面を見ながら撮影してみては感心していた。

そんなデンマークだが、とっても便利なシステムがひとつあった。それはDankort(ダンコート)という名のデビットカード。このシステムは80年代半ばから普及していたそうだから、デンマークもやるじゃないか。デンマークでは、100円くらいの買物でさえこのダンコートを使って済ませてしまうことも多い。どんなに小さなお店にだってダンコートのターミナルは置いてある。レジに置いてあるターミナルにカードを通して4桁の暗証番号を入れると支払いが出来、買物の2−3日後には銀行口座からその額が引き落とされている。だから私も現金はあまり持ち歩かなくなった。たまに200クローネ(約3800円)ほど引き出して財布にいれ、ごく小さな買物に使うくらいで、手持ちの現金がいくらあるか、ほとんど気にすることはない。スーパーにキヨスク、カフェにレストラン、タクシーや駅の切符販売機など、どこででもダンコートが使えるから、現金がなくても困らないのだ。日常、現金でしか支払えないものといったら、バス料金と宅配ピザの支払いくらいか。

そんな生活に慣れた頃、日本に里帰りして友人達と街で遊び、夜、現金がもうあまりないことに気が付いてドキリ。当時日本では夜はATMも閉まっていたから(今はもうちょっと便利になった様ですね)、現金を手に入れる方法がない。幸いその時は手持ちの現金で足りたけれど、危ない危ない。慣れとは怖いものだ。

ダンコートにはもう一つ便利な点がある。ダンコートがあれば、わざわざ銀行のATMを使わずとも、普通のお店で現金が引き出せてしまうのだ!

例えばお店で30クローネの物を買うとしよう。その時、ちょっと現金も手に入れたいなと思ったら、支払いにダンコートを使い、「200クローネにしてね。」と頼む。すると店員さんはレジに入金を200クローネと打ち込み、200クローネの入金から30クローネの品代を引いた差額の170クローネを、『おつり』として現金で渡してくれるのだ(後日、銀行口座からその200クローネが引き落とされる)。

デンマークのATMはどこでも24時間使えるけれど、営業時間外や、他行のATMでは手数料がかかる。わざわざATMに行くのも面倒だ。だから私はいつも買物のついでに現金を引き出す。便利でしょ。

通常、銀行のキャッシュカードには、このダンコートとVISAかマスターカードがセットになってついている。だから、これ一枚で、デンマーク国内ではダンコートとして使い、国外に出たらクレジットカードとして使用できる。

最近は日本でもケータイでの支払いなど、現金を持ち歩かずに支払いを済ませられる方法が増えてきたようだ。だけど、外国から日本を訪れた場合、使えるものは今でもやはりキャッシュカードくらいだろう。そのキャッシュカードも小さいお店だと使えなかったりする。また、キャッシュカードで支払えると表示されているお店でも、実は外国で発行されたキャッシュカードは機械が受け付けないというところも時々あって、困ってしまう。デンマークでも、ダンコートはどこでも使えるけれど、キャッシュカードが使えないお店は多いのかもしれない(普段デンマークではダンコートしか使わないのでよく知らないが)。

そんなわけで、今は国境をさかいにシステムが違うけれど、そのうちキャッシュレスと世界共通化が進んで、どこに行ってもカード一枚、あるいはケータイ一台、あるいは指一本(!?)で困らない時代がやってきたりするのでしょうか。

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